仙台地区と東信地区において、気象庁管轄以外のものも含めてデータ収集を行い、また一部では長期の観測を実施して、それらのデータに基づいて中縮尺気候環境図の作成を試みた。 1.仙台地区(海の影響が顕著である地域) (1)仙台市環境大気測定局の気象データに加え、海岸部と西郊の渓谷部で気温と風の常置観測を実施した。 (2)夏型気圧配置下静穏日における海陸風交替の実態と、海風開始時における気温低下量を明らかにした。 (3)渓谷部では海風とほぼ同時に谷風が開始する場合と、1〜2時間を要して海風が到達する場合が解析された。 2.東信地区(内陸盆地と山地からなる地域) (1)市町村管轄の風データを利用して、夏季静穏日における山谷風交替の地域性を検討した。その結果、千曲川沿いの谷風は、山腹斜面の谷風に対し2時間ほど遅れて開始する。また東部では谷風と山風の交替時刻(17時〜20時)に南関東起源の大規模海風の到来が見られることが明らかになった。 (2)3種類の総観場の日最高・最低気温について、市町村管轄の気温データを被説明変数とし、標高と地表被覆を説明変数とする重回帰分析を行った。その結果、変数の中では標高の説明量が大きく、地表被覆では都市度が特に日最低気温を説明する変数として多く採用された。樹木度は標高と相関が高いため、今回説明変数として採用されることはなかった。 全体として、AMeDASなど気象庁管轄データ以外に市町村管轄データを活用し、また必要に応じて少数の観測機器を1年間展開し、総観場ごとにデータを適切に整理することで、気温や風などの中縮尺気候環境図を作成することがじゅうぶんに可能であることが示された。
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