研究概要 |
都市の熱環境の緩和因子として近年注目されている街路樹(緑地)が都市地表面の放射収支成分、とくに下向き放射成分に、さらには気温・湿度に及ぼす影響について、詳細な観測と解析に基づき解明することが本研究の目的である。今年度の研究成果は次の通りである。1.地方の中都市(熊谷・太田市)・薪宿副都心にて、都市キャニオン構造と街路樹について実態調査し、多数地点の天空写真を用いてビル壁面と街路樹の遮蔽率を解析した。市街地の遮蔽率の上限値は中都市で約45%、大都市の旧市街地でもほぼ同程度であったが高層ビル街では街路が広いものの約70%と大きかった。また、街路樹の遮蔽率は昨年調査同様20%以下であったが、高層ビル街では40%に達する地点もみられた。しかし、若干の特殊例はあるものの昨年調査とほぼ同様の結果であることが判った。2.盛夏季(7月下旬~8月上旬)の計8日間、及び厳冬季(1月中旬)の1日間、ポロメーターによる葉面蒸散測定(毎正時、日中のみ)、サーモトレーサーによる表面湿度測定(30分ないし1時間毎)、及び気温・湿度・短波・長波放射成分などの詳細な気象観測(5分平均値の連続観測)を東西街路の都市キャニオンにおいて行った。天候・葉面・方位別の葉散量の日変化型を捉えることにより、方位別蒸散は南面が最大で、西、東、北の順に小さくなることなどが判った、日最大値は南面で正午頃、東面で午前、西面で午後に出現する。蒸散の主要決定因子は光量子量(日射)・湿度であり、盛夏季の晴天・正午頃には最大約8~10μg/cm^2・s(昨年測定した秋季の2倍以上)もあるが、蒸散が周囲気温・温度に及ぼす影響は複雑で微妙であり,鋭意検討中である。しかし、蒸散のため葉温は常にビル壁面よりかなり低温に維持され、下向き放射成分を顕著に抑制しており、放射に対する街路樹の緩和効果は極めて明瞭である。
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