研究概要 |
本研究の目的は,洪水と渇水に代表される水分極値現象の生起頻度と規模を一級河川の流域を単位として定量的に把握し,洪水・渇水の影響と危機管理の差異に関する地域特性と時系列特性を明らかにすることである。 平成11年度に実施した研究によって新たに得られた知見と成果は,下記のとおりである。 1.過去に出現した渇水として最も典型的であった1994年の事例に基づき,木曽川流域を対象に河川水質の周年変化について平年値との比較検討を行なった。例年にない小雨が記録された'94年夏期の河川水質には,流量の減少と水温の上昇による水質の顕著な悪化が認められ,将来における気候変動が河川水質に影響を与えることを示唆する結果が得られた。 2.洪水被害を軽減するために必要な危機管理の体制を確立するための基礎資料として,雲出川デルタにおける1961年以降の主要な洪水の事例について解析した。デルタは洪水災害に対して脆弱な典型的地域であり,堤防や遊水池等のいわゆるハード面の整備に加え,対象地域の地域住民に対する早い段階での警報システムの確立が重要である点を指摘した。 3.雲出川における再現期間100年の最高水位について解析した結果,洪水被害軽減のための迅速かつ適切な情報を提供する上で必要な具体的指標として,上流地点とデルタ地域とのピーク水位の相関,デルタ地域への洪水の到達時間が危機管理の理論的根拠となることが明らかになった。
|