1 本年度は、泥炭層中の無機物が高精度気候変動復元の良好な研究対象であることに着目して、北海道名寄 盆地剣淵に堆積する厚さ12mの最終氷期泥炭層のボーリングコアを採取した。科研費の採択時期が12月であったために、急遽、12月にウオールサンプラーを使用してコアを採取した。現在のところコアの記載、および無機物量・鉱物組成・粒度組成・ESR分析のための試料調整を行っているところである。本格的な分析は平成12年度に行う。 2 すでに韓国済州島コアと岐阜県谷汲コアの分析を終了し、最終氷期、とくに過去3万年間の風成塵の堆積量 変動を明らかにした。この結果は平成12年3月の日本地理学会で発表する予定である。これによると過去3万年間に北大西洋地域で確認された高精度気候変動に対応して、東アジアでもモンスーンの変動が起こったことが、コアに含まれる風成塵の量や粒度組成に明瞭に記録されていることが判明した。また福井県中池見湿原コアについても分析が進行中である。 3 上記のように東アジア各地の泥炭層コアの分析によって、東アジアの最終間氷期から完新世にかけての古風系を復元するとともに、10^2年の高精度分析によって、最終間氷期から完新世における古環境復元や、モンスーン気候変動のトリガーとしての風成塵の役割を解明できる可能性を得ることができた。
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