日本で最初に公式の気象観測が開始されたのは1872年であるが、それ以前の1840年代〜1870年代に長崎県出島においてオランダ人医師らによる詳細な気象観測が実施され、一部のデータがオランダ王立気象研究所に保管されていることが明らかになった。そこで、本研究ではそれらの観測データをすべてデジタル化し、長崎海洋気象台の観測記録(1878年以降)と連結すると同時に、長崎県諫早市に残る1700年〜1860年の藩日記中の天候記録から推定される気候値とも結合させて長期的な気候変動の実態を解明することを目的とした。 平成11年度は、オランダ王立気象研究所の共同研究者G.P.Konnen博士ら4名の海外共同研究者を日本に招聘して、出島気象観測記録の収集とデータの補正に関して研究討議を行った。その過程で、新たに1810〜1820年代のvon Sieboltらによる観測記録、および短期間ではあるが1770年代の日本最古の気象観測記録の存在が明らかになり、東アジアにおける小氷期後半の気候変動を議論する上で貴重なデータであることが認識された。1840年代〜70年代の期間中、1845年〜1858年の観測記録についてはすべてデジタル化が終了し、計算機用のデータファイルに保管した。1870年代の観測データについても入力がほぼ完了しており、エラーチェックの段階である。データの補正と研究成果の論文投稿の打ち合わせのために、研究代表者がオランダ王立研究所を訪問して具体的な討議(ブレインストーミング)を行った。研究成果の一部は、平成11年秋に都立大学で開かれた気候変動に関する国際会議で発表し、会議プロシーディングスに掲載した。
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