長崎における歴史天候記録と気象観測データの結合による過去300年間の気候変動

2000 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 11680097
• 研究機関: 東京都立大学
• 研究代表者: 三上 岳彦 東京都立大学, 理学研究科, 教授 (10114662)
• キーワード: 気象観測 / 気候変動 / 小氷期 / 日記天候記録

研究概要

日本で最初の公式気象観測の開始は1872年(函館測候所)であるが、それ以前の1845年〜1883年(一部欠測)に長崎県出島においてオランダ人医師らによる詳細な気象観測がなされ、その大半がオランダ王立気象研究所に保管されていることが明らかになった。また、同じ出島において1819年〜1828年にBlomhoffとSieboldによる気象観測記録も残されている。本研究の目的は、長崎(出島)における19世紀前半のオランダ気象観測記録を補正し、現在の長崎海洋気象台の観測記録(1878年以降)を含めた180年間のデータベースを作成するとともに、諌早藩日記に記載された1700年〜1868年の毎日の天候記録から復元された気温時系列と接続させて過去300年間の長期気候変動を明らかにすることである。
研究の結果と考察は次の通りである。
1)補正された月平均気温データを用いて、長崎における過去180年間の気候変動の解析を行った。その結果、1845〜1858年の高温傾向が認められ、同時期に観測記録の存在する上海(中国)とも位相が一致することが明らかになった。この時期は、「小氷期」の終了期に相当しており、注目される。
2)次に、藩日記(諌早)に記載された毎日の天候記録から、1月の降雪率(降雪日数を降水日数で除算したもの)を求め、1次回帰式で月平均気温を算出した(1700-1868)。その結果、18世紀から19世紀前半にかけて明瞭な気温低下傾向が現れたが、その後1850〜60年代にかけて温暖化が顕著に認められ、オランダ観測記録と同様の傾向を示すことが明らかになった。

研究成果

• [文献書誌] Mikami,T: "Quantitative climatic reconstruction in Japan based on historical documents"Bulletin of the National Museum of Japanese History. 81. 41-50 (1999)
• [文献書誌] Mikami,T.,Zaiki,M.,Konnen,G.P.and Jones,P.D.: "Winter temperature reconstruction at Dejima,Nagasaki based on historical meteorological documents during the last 300 years."Proceedings of the International Conference on Climate Change and Variability. 103-106 (2000)
• [文献書誌] Konnen,G.P.,Zaiki,M.and Mikami,T.: "Recovery of early 19th century meteorological observations in Japan"Proceedings of the International Conference on Climate Change and Variability. 101-102 (2000)
• [文献書誌] 三上岳彦: "歴史時代の気候変動-過去1000年間の気温変動とその要因-"月刊 海洋. No.24. 194-199 (2001)