これまで1985、1990、1995年に多摩ニュータウン在住のサラリーマン夫妻の生活時間調査を行ってきたが、2000年に同様の調査を行い、15年間の社会経済の変化が都市勤労者の生活に与える影響を明らかにした。 2000年調査は、10月1日から15日までの間の、平日、休日、土曜の3日間について、24時間のすべての行動について調査し、それに加え世帯の状況や各人の意識などを問う付帯調査を実施した。調査依頼世帯数は323世帯であり、回収数は279世帯である。 夫妻の調査結果によれば次のことが明らかとなった。(1)バブル崩壊や不況が夫の収入労働時間の延長をもたらし、生理的生活時間、特に睡眠の減少と、社会的文化的生活時間の減少やその受動性を増幅させている。(2)商業用地の誘致、鉄道の延長など、開発型日本経済を代表する多摩ニュータウンの発展は、雇用労働者の時間的ゆとりをもたらすのではなく、逆に平日の長時間労働が悪化し、地域や家庭の時間を奪っている。(3)多摩ニュータウンの経済的発展は商品経済を発展させ、家事の外部化など家事労働の減少を招いている一方、無職の妻のアクティブな生活と地城を変える力を持ち始めた。 子どもの調査結果から次のとこが明らかとなった。(1)幼児期は「生きるための基本的な行動」と遊びが生活の中心であり、年齢が高くなるにしたがって学業時間が増加し、生活の中心が勉学に移る。(2)どの時間にも性差があり、特に家事的生活時間に性差が大きい。(3)「全国調査」と比較すると、多摩ニュータウンの子どもは学時間が長く、生理的生活時間や余暇的時間が短く、勉学中心の生活であるが、「1987年調査」と比較すると、学業時間や余暇時間は減少し、「学びからの逃走」は多摩ニュータウンの子どもでも起こっている。
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