研究概要 |
本研究では,設定した研究主題にそって,次のことを課題とし検討した。 (1)高齢者の生活保障の現実と,介護保険制度が創られた経緯,およびその内容と問題点。高齢者は,近年,独居や夫婦暮らしが多くなり,子と同居する場合にも独立性を維持する多様な工夫をしている。この中で高齢者の日常的な不安を越えるためには社会的支援が必須である。近年導入された介護保険制度はその一つの事例である。これまでの措置制度から契約制への移行がその基本であり,保険適用申請やサービス選択に関わる高齢者の負担,保険料や自己負担,サービスの内容や質,介護労働者の労働条件など,幾つかの問題が指摘されている。 0 (2)介護の質を担うホームヘルパー職の,日本における歴史的展開と現状,その課題。ホームヘルパーの歴史的展開を日本の事例にそって述べ,この職業がおかれている社会的な位置づけを検証し,その労働条件を検討した。労働報酬や勤務時間,労働強度,研修機会など,改善すべき労働条件が多い。 0 (3)介護保険制度についての人々の理解のありかたと,利用者の選択行動。介護保険制度が人々によってどのように理解されているのか,介護サービスに関する情報をどのように取得し選択につなげたのか,介護サービスへの意見,介護保険制度導入前後でのサービスのあり方の違い,介護保険制度,ホームヘルパー,ケアマネージャーへの評価などについて調査した結果を述べ,考察を加えた。情報を整理し,高齢者の判断や選択を支援するケアマネージャー職の重要性と,そのために必要な整備条件を指摘した。 (4)今後の研究へつなげるために,介護労働に関する基本的な視点を確認するとともに,現行の介護保険制度の問題点の幾つかについて,あらためて指摘し,今後の研究に向けての課題を述べた。
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