家庭内における各家族員のテリトリー形成のメカニズムを解明するため、各家庭における妻と夫を対象に、三重県津市内に立地する一戸建て住宅団地において調査を実施した。 テリトリーの中心空間となる専用個室の所有率は、妻が2割、夫が4割となっており、妻は納戸的に、夫は書斎的に使用されている。個室所有に対する評価は、妻・夫ともに高いが、夫の方がより積極的に評価している。個室所有の阻害要因は、妻の場合は空間条件、家族条件に加え、プライバシー意識の低さが影響しており、夫の場合は空間条件と家族とのコミュニケーション重視の考えが影響している。身体的プライバシー行為は妻・夫ともに個人空間で行われているが、精神的プライバシー行為及び趣味・娯楽については妻は共有空間で行い、夫は個人空間で行う傾向がみられる。また、日常行為について、妻は家族なら誰でも側にいていいと考えているのに対し、夫は精神的プライバシー行為は誰も側にいて欲しくないと考えている。「持ち物が自由に置け、好きなときにしたい行為ができる部屋」というモノと行為からみた住宅内のテリトリーについては、妻では「専用空間テリトリー型」9%、「共有空間テリトリー型」19%、「全スペーステリトリー型」64%、「テリトリー非形成型」8%であり、夫はそれぞれ25%、8%、49%、13%であった。妻の方が共有空間をもテリトリーとしていることが多い。同一家庭内における妻と夫のテリトリータイプをみると、夫婦が同一のパターンとなる傾向がみられるが、その他に妻の方がテリトリーが広いタイプと夫の方がテリトリーが広いタイプも一定程度みられる。また、人や物の侵入の条件を加えた「持ち物を自由に置け、好きなときにしたい行為ができ、人や物の出入りを制限でき自由にできる部屋」というテリトリーについても、同様の傾向がみられた。
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