家庭内における各家族員のテリトリー形成のメカニズムを解明するため、各家庭における妻と夫を対象に、三重県津市内に立地する一戸建て住宅団地において、調査を実施した。 テリトリーの中心空間となる専用個室の所有率は、妻が2割、夫が4割となっており、夫の専用個室確保が優先されている。専用個室所有の阻害要因は、妻の場合は空間条件、家族条件に加え、プライバシー意識の低さが影響しており、夫の場合は、空間条件と家族とのコミュニケーション重視の考えが影響している。 一方、モノと行為からみたテリトリーについては、妻の方が家族共用空間をもテリトリーとしている場合が多く、住宅全体を支配・管理している傾向がとらえられた。テリトリー型を形成する要因については、客体条件では、空間的な余裕の有無や、家族周期の高低・家族人数の多少等の家族条件が関連しており、主体条件では仕事・趣味等の個人生活の確立度、プライバシーや個人生活重視の考え方の有無が形成要因となっている。また、家族関係の善し悪しがテリトリー形成に強く関連しており、家族関係が良くない場合には、テリトリーが形成されにくく、良い場合にはテリトリーが拡大する傾向が捉えられた。 同一家庭内における妻と夫のテリトリー型をみると、夫婦が同一の型になる傾向がみられるが、その他に妻の方のテリトリー範囲が広いケースと夫の方が広いケースが一定程度みられる。これは、家庭内における妻と夫の住宅の支配・管理権の度合いとの関連として捉えられる。
|