本研究は、福祉衣料の着用快適性を素材性能から客観的に評価するシステムの確立を目標とした。なかでも、寝たきり高齢者・乳幼児用紙おむつと転倒防止浴室マットなどのクッション材料の性能設計に焦点を絞り、以下の研究成果を得た。 紙おむつについては、市販の乳幼児・大人用紙おむつを試料として、吸収層を含む中央部と脚ギャザー部の素材について、肌触りの良否を素材の力学特性、表面特性から評価する評価式を導いた。評価式の誘導には段階式ブロック間残差回帰法を用いた。評価式の誘導に用いなかった20種類の試料を用いて評価式の検定を行った。肌触りの良否の計算値と主観評価値の関係から、本評価式により主観評価のばらつきの範囲内で精度よく肌触りを評価できることを確かめた。また、資源の有効利用、地球環境保全の視点から、布おむつ(積層布)と紙おむつの力学特性、表面特性、水分移動特性を比較し、さらに布おむつの繰り返し着用による性能変化の範囲と特徴を数量的に捉え、布おむつの併用に関する基礎試料を得た。 浴室マットについては、表面形状や素材性能の異なる6種類の発砲樹脂系マット試料を選定し、成人女子を被験者として、乾燥時、水中、0.5%石鹸水中の3条件で、滑り易さ、柔らかさ、踏み心地などの使用感の良否に関する評価を一対比較法によって行った。マットの摩擦特性、圧縮特性、接触面積、接触圧等を計測し、素材特性と主観評価値との関係を検討した。圧縮仕事量や圧縮変位量が大きいマットは柔らかいと評価され、圧縮回復性が大きく弾力性があり、平均摩擦係数や摩擦係数の変動が大きく滑りにくいマットは、踏み心地が良いと評価されることを明確にした。
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