本研究は福祉衣料の着用快適性を素材性能から客観的に評価するシステムの確立を目標とした。ここでは、寝たきり高齢者・乳幼児用紙おむつと枕などのクッション材料の性能設計に焦点を絞り、以下の研究成果を得た。 紙おむつについては、人間の体熱調節機構に大きく影響する熱移動特性の設計について検討した。市販の紙おむつ47種類を試料として熱コンダクタンス(K')を測定した。一回の排尿を想定した0.4g/cm^2の生理食塩水の含水によりK'の平均値は乾燥状態より約40%増加した。一定量の含水条件では吸収層を多く含む重い紙おむつは含水率が小さくなり、含水後のK'の値が小さくなる傾向が示された。構成部材別に検討すると、乾燥状態での紙おむつ全体の熱抵抗R(=l/K')は、トップシート、吸収層、カバーシートの熱抵抗の総和にほぼ等しい結果が得られた。紙おむつの吸水特性を主として担う吸収層については、吸収層の水分率が大きいほどK'が大きくなる傾向を実験的に確認した。吸収層の含水時のK'について、吸収層の繊維の熱伝導率を繊維軸方向と繊維軸直交方向の値の平均値を用いて、吸収層の乾燥状態でのK'、吸収層の素材と水の熱伝導率、吸収層の素材と水の密度、吸収層の水分率から概算を試み、その予測の可能性を確かめた。 枕の性能設計については、同じ大きさの側地の中に充填材料の種類と量を変化させて試作した平枕を試料として、硬さ感など寝心地の主観表価値と圧縮特性との関係を検討した。枕の製品としての硬さや柔らかさは圧縮仕事量WCを指標として客観的に評価できること、同じパイプ充填材料であっても充填量によって硬さ感が変わることなどが定量的に評価された。
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