消費者の行動は、社会・経済環境の変貌に対応して徐々に絶え間なく変化するものであるが、これまでの食料消費行動の研究では、分析対象期間内の消費行動は一定と仮定して、食料消費と所得・価格などの要因との関数関係をとらえているものが多かった。そこで、私は、従来、よく用いられてきたM.Nerlove型の回帰モデルの回帰係数が時間に対応して変化するようなモデルを開発し、1975年以降の食料消費行動を把握するうえでこのモデルか有効であることをすでに明らかにした。さらに、時間の経過とともに変化する食料消費行動を計量的に示すための方法を検討するために、11年度は食料消費のうちの調理食品と外食についてファジィ回帰分析の適用を試みた。これは、食の外部化に関する行動については、消費者の生活スタイルや食意識が反映されるため、主観的あいまいさの入る余地が大きいものと推察されるので、通常の回帰分析よりもファジィ回帰分析を適用するほうが有効であると考えたからである。同時に、通常の回帰分析も行い両者の結果を比較し、ファジィ回帰分析の有効性について検討してみた。その結果、所得に関してのみ、広がりパラメータが示された。つまり、これらの支出金額に対して、相対価格と習慣効果は単純に影響しているが、所得との間にはあいまいな関係が存在しており、所得のこれらの支出金額に対する影響力には一定の幅をもつことが判明し、ファジィ回帰モデルの適用の有効性が確認できた。
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