研究概要 |
地域にねざした住宅政策が全国の町や村でどのように展開されているのか,そこでの課題は何か,そのなかで「わが町・わが村の住生活像」をつくりあげ,具体化していくための住教育・住情報のあり方について検討してきた。その結果は,つぎのようにまとめられる。(1)住宅マスタープラン策定を機に地域にねざした総合的な住宅政策が展開されるようになり,住民参加による住まい・まちづくりが「住教育」や「住情報」と密接にかかわりあいながら着実に進みはじめている。(2)市区町村住宅マスタープラン報告書に記述された住教育・住情報の構想はどれも具体的で,アイディアにとみ,すぐにも実現できそうなものが多かった。都道府県の住宅マスタープランの影響は大きく,また,市区町村が住宅マスタープランを策定していく過程で構想が具体化していく側面も大きいと考えられる。都道府県住宅マスタープラン報告書では,どちらかというと抽象的な内容が多かったから,市町村の構想は具体的で魅力的である。学校教育と社会教育との連携を強化し,生涯学習の視点から,構想をいかにして具体化していくかがこれからの課題である。多くの体験を交流しながら,その地域らしい住教育実践を蓄積していくことが大切である。(3)具体的に住教育にとりくんでいる自治体はそれほど多くはなかった。現状では,住民の主体的参加による住まい・まちづくりはまだ手さぐり状態にあると考えられる。学校教育における「総合的な学習の時間」などとの連携をはかりながら,住宅マスタープランにみる住教育・住情報の内容が「地域」で実を結ぶことが期待される。(4)地域に根ざした住生活像の実現のために,今後は住宅施策を具体化していく必要がある。その意味で住民ニーズを的確に把握し,住まい・まちづくりへの積極的な住民参加を促すための住情報交流や住教育の充実が自治体住宅政策の大きな課題になっていくと考えられる。
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