研究概要 |
老人ホームで介護に当たる施設側の人への2回のアンケート調査を通して,入居者の生きがい観や情動の活性化,衣生活の在り方などについてどのように考え,また実状はどうなのかを考察した。老人ホームは介護の程度により,(1)特別養護,(2)養護,(3)軽費に分類される。第1回目の調査では200施設に,第2回目の調査では300施設に郵送法によるアンケート調査を実施した。なお,いずれの調査でも3種類の老人ホームの調査数はほぼ同数になるように実施し,回収率は70〜80%であった。調査内容は,(1)生きがい観を与えるための催し,(2)趣味活動,(3)施設の環境づくりへの配慮,(4)施設内での衣生活,(5)入居者用衣服の必要性能,(6)おしゃれ意識,(7)化粧行動,(8)ファッションショーなどである。 生きがい観を与える催しは施設の種類に関係なく,季節に合った行事,誕生会,子供との交流会,趣味活動,外に出かけるなどが多く行われていた。環境づくりへの配慮では入居者のプライバシーの保護,衛生面,花・草木を置くなどの配慮が多かった。衣生活では衣服着用の規則のある施設は全体的に少なく,日常着と寝衣の区別,着替え行動,入居者用衣服の必要性能は,特別養護・養護・軽費の間に差がみられた。おしゃれ行動については施設の種類に関係なくおしゃれの必要性,おしゃれによる精神的面への効果を認めていた。美容師による入居者への化粧行動の実施により,明るくなった,おしゃれに関心を持つようになったと,化粧行動の効果を認めていた。なお,ファッションショーについても情動の効果を認めているが,実施率はまだ低い。これらの結果から,おしゃれに関心を持つことは,若々しくなる,明るくなる,精神的な衰えを防ぐなどの効果があり,情動の活性化の面から有用であるといえる。
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