染色工場や染料製造工場から排出される染料廃液に対する微生物処理および酵素処理を目的として研究を実施した。微生物源としては銅フタロシアニン染料(PC染料と略す)水溶液を環流した環流土壌から純粋分離した糸状菌ミロテシウムベルカリアKW-1株を用いた。これによる銅フタロシアニン染料を含む7種の直接染料に対する生分解性、および染料製造工場廃液に対する生分解性を検討したところ、各種染料および実際の染料工場からの廃液に対しても本株が有効であること、本株を固定化した担体により銅フタロシアニン染料が効率よく分解すること、本株由来の粗酵素液により各種染料水溶液が効率よく脱色することを明らかにした。本株由来の酵素を同定することは出来なかったが、ミロテシウムベルカリア由来のシグマ社製市販ビリルビンオキシダーゼにより各種染料水溶液が効率よく脱色することは明らかに出来た。さらにミロテシウムベルカリア由来の天野製薬(株)製ビリルビンオキシダーゼを用い15種染料の脱色能を調べたところ2種(C.I.Direct Yellow 86およびC.I.Reactive Red120)のみは殆ど脱色しなかったものの、これ以外の13種はビリルビンオキシダーゼにより効率よく脱色した。酸性染料および反応染料で骨格がアントラキノン系である青色染料9種についてもビリルビンオキシダーゼによる脱色実験を行ったところ、いずれもよく脱色することがわかった。特に9種の中のC.I.Acid Blue 40を精製し、この水溶液の脱色液をHPLCにより分析し、脱色過程の詳細な追跡を行った。その結果、本酵素による脱色反応で生じた分解中間体についてその吸収スペクトルを明らかにすることが出来た。
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