本研究の目的は、防水布の縫目部に充分な防水性能を持たせる縫製方法の追求と、消費過程における防水性能の維持の方策を検討することである。本年度の研究は前年度の結果を踏まえ、特に消費過程における防水性の維持に力点を置いて検討した。消費過程における縫目への影響を検討するためにモデル的に縫目疲労試験機を導入し、多数回(2500〜7500回)の荷重・除重作用を与え、この前後の縫目部の耐水度試験を行った。その結果、縫目の荷重・除重回数とともに縫目部の耐水度は明瞭に低下することがわかった。縫目の針穴部を観察すると、疲労試験後には布地の針穴部が損傷し、穴径も拡大するが、このような変化が耐水度の低下と結びついていると考えられる。 前年度の結果を併せて考えると、ミシン針は細く、縫糸は撥水加工し、太い縫糸で縫製すると比較的高い縫目の耐水度を発揮させることができる。ステッチ密度に関しては針穴部からの漏水という点からは低くするべきであるが、一方、低いとステッチ間隙からの漏水が発生し、シームの構造との関係で一概にはいえない。 以上の結果を踏まえ、縫製条件との関連で、縫目部を共布でくるむ(ランプドシームとする)、コア糸にナイロン撥水加工糸を複合して縫製する、針穴部および縫代部をポリウレタン樹脂で処理する、などの方法を考案した。このうち比較的大きな効果が得られたのは、後者の二つの方法であった。ナイロン加工糸の複合縫目においては、加工糸の複合本数には適正な数が存在し、疲労試験によって耐水度の低下傾向は現れるものの、複合しない場合より大きく改善されたものになった。ポリウレタン樹脂によって処理したものは、間隙を充填してしまうため効果は極めて大きかったが、衣服に適用した場合の問題点をさらに検討する必要がある。
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