生活が豊かになり、自然から得られた色を身につけたいということから、天然藍を使った染色への関心が大きくなっている。藍を染めるには、藍植物を発酵させて作った、藍の色素成分であるインジゴを含む「すくも」という染料を発酵させ、インジゴを還元させることによって染色する「発酵建て」という技法によって行われる。藍の発酵建ては、熟練を要する技法であり、素人が簡単にできるものではない。発酵建てを簡便に行えないのは、すくもにもともと含まれているとされている好アルカリ性微生物という、特殊な微生物を増殖させ、管理するということがネックになっていると思われる。また、すくも作りという大変な労力を要する作業を経る必要がある。 微生物は、身の回りの土壌などに様々な種類のものが広く分布しているので、必ずしもすくもに含まれている微生物のみが藍の発酵建てをするとは考えにくい。そこで、身の回りの微生物を藍の発酵建てに使えないか検討した。微生物を豊富に含むと考えられる腐葉土、堆肥作りなどに利用されているEM菌などの手に入れやすい微生物によって発酵させて、合成インジゴの還元を試みたところ、還元・染色できることがわかった。また、インジゴを含有している、すくもにする前の藍の乾燥葉でも、このような発酵により、染色をすることが可能であった。その際、乾燥葉を粉砕することが有効であることもわかった。すなわち、伝統的な藍染めで使われているすくもでは、色素であるインジゴと、発酵のための要素が一つのものから提供されているが、全く別の所から供給することによって、発酵建てと同じことを実現することができた。
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