平成7年より、農林水産省、全国農業会議所、農業協同組合等により農家の家族経営協定の普及が進められている。5年を経過し、初期に締結したケースの効果や反省、農業者年金の仕組みの変更等の影響も受けて、協定に対する批判的見解も出てきている。加えて、自分たちの人生・生活設計にあわせた生活協定を多く盛り込んだ協定を締結する農家も出てきており、家族経営協定の締結の推進は、第二段階に入ったと見ることができる。 変化しつつある家族経営協定締結状況と今後の協定に含められるべき指標の提案のための基礎的データとして、1999年家族経営協定に関心をもつ夫妻50カップルの生活時間調査と意識調査を実施した。生活時間調査結果については昨年度報告したので、意識調査部分について報告する。 1)農業従事日・農休日の両方において妻は夫より「全労働時間」が長いにもかかわらず、自己の労働に見合った評価と報酬を要求することは、諦めている。妻の報酬・収益配分は形式的に流れ、妻の管理のものとなっていない場合が多い。 2)夫妻の間において農業経営・生活経営に対する話し合いが不足している。特に、夫の生活経営に対する関与は少なく理解は低い。 3)夫の家事参加が少なく、妻の側もまた夫に家事参加を要求していない伝統的なジェンダー観を反映した意識と行動様式を変えていない。妻はその状況に満足しているわけではなく、「不平等」を感じてはいるが、その不満を解決に向けて行動してはいない。 4)女性農業者の社会参画を肯定的にとらえているが、妻は自分が積極的に社会的役割を引き受ける主体となることにはしりごみする気持ちをもっている。 5)農家の場合「多世代同居」が前提として語られ、「別居」に関しては、話題にすること自体がタブーとされている。しかし、夫妻、特に妻は、別居でなくとも「親と離れた時間をもちたい」と思っている。 6)親の介護に関して、妻は夫の親と自分の親の介護についでまわりの人と話し、状況づくりをしているが、夫は自分の親に関しては自分のきょうだいと話しても、妻の親の介護には無関心であり、伝統的な「家父長」制度的意識をもっている。
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