染色堅牢度判定における汚染評価は、汚染用グレースケールを対照として視感判定することがJISで規定されているが、視感判定では、個人による誤差が避けられない。そこで、条件が異なったいくつかの視感実験を行い、その結果と汚染用グレースケール、汚染用カラースケール(134委員会作製)とを比較し、そのばらつき程度を調べた。個人、個人はもちろんのこと、視感実験条件によってもかなりのばらつきが見られ、視感評価値として一定の値を見出すことはできない。近年、測色値に基づいた計測評価値が望まれており、ISO式をはじめ、寺主、佐藤によるNs式、Fs式が提案されている。ISO式は、ドイツ提案のSSG式、イギリス提案のSSR式の折衷案としてまとめられたものであり、Ns式は、汚染用グレースケールをマンセル値から理論的に解析して導き出されたもので、CIELAB値からでも算出できる。Fs式は、Ns式を寺主とは異なった方法でCIELAB値から求めるようにした式である。上記の視感評価値と計測評価値を比較すると、ISO式は、色相による評価の違いが加味されておらず、Yellow近辺でずれる傾向にあった。Ns式、Fs式は、色相による評価の違いを加味しており、有彩色では、かなりの一致が見られたが、無彩色近辺ではずれる傾向にあった。視感評価値もかなりのばらつきが見られ、計測評価値もそれぞれ長所、欠点があるので、測色機器が発達してきた今日、汚染用グレースケールに頼るのではなく、色知覚の視点に立って汚染評価すべきではないかと考えた。明るい-暗い、濃い-淡いなどの色彩感情は、ある点からの楕円方程式で表すことができることを見出したので、この基本式を汚染評価に適用することを考え、色立体に色の濃さラインを引いた。そのラインは視感評価値とも良好な対応が見られたので、汚染用グレースケールに頼らず、色の濃さラインから汚染評価ができるのではないかと考えている。
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