グレースケールを用いた染色堅牢度判定において、国が違えば視感評価にどのような差異が見られるのかについて、タイと共同研究を行い共通点、相違点を見出したが、香港と共同実験をすることによって、日本、タイ、香港の視感評価の違いを明らかにすることができた。汚染評価においては、ほとんどの試料において香港が最も厳しく評価した。退色においては、日本が最も厳しく評価し、次いで香港、タイの順となった。3国を比較すると、明らかに国による傾向が見られ、いずれが正しいとは言えないが、染色堅牢度判定をグレースケールを基準として視感評価を行なうと、個人だけでなく、国によってもその評価基準が異なることが明らかにできた。 色立体中において系統的に50の基準点を選び、その点から6方向に変化する変退色評価試料を作成し、変退色用グレースケールを対照基準とした視感評価実験を行い、計測評価値と比較検討した。その結果、染色堅牢度値より色差値の方が視感評価値との相関が優れていた。色差値のなかでも、CIE94(1:1)の色差値が、色相の影響があまり見られず、いずれの変化方向に対しても視感評価値と高い相関係数が得られた。そこで、そのCIE94(1:1)を色立体中に展開することによって、色立体中での変退色用グレースケールの適用の仕方を大まかに見出すことができた。 次いで、変色をあまりともなわない退色試料を系統的に作製し、上記と同様、視感評価値と計測評価値とを比較検討した。その結果、退色試料においては、色差値よりも染色堅牢度値の方が視感評価値との対応が優れていた。特に、Nc#値、SEK gradeが視感評価値との相関係数が高かった。このように、変色においては色差値が、退色においては染色堅牢度が視感評価値との対応が良いことが見出されたので、変退色を評価する計測評価値を導くには、色差値の概念と染色堅牢度値の概念を組み入れたものでなければならないと言える。
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