染色堅牢度は、グレースケールを用いて視感によって評価されているが、個人による誤差を避けることができない。視感評価に代わる計測評価が望まれ、いくつか提案されているが世界共通のものとなっていない。そこで、視感評価と計測評価の関係を、汚染、変退色、退色に分けて検討した。その結果、以下のことが見出された。 1.汚染においては、計測評価式から得られる等級曲線を色空間中に引き、その等級曲線の媒介として視感等級値と比較し、それぞれの計測評価式の特長を明らかにした。 2.色の濃さを用いて汚染評価を検討すると、色立体中の空間距離の考え方で表示出来る可能性を見出した。 3.変退色の試料においては、CIE94(1:1)色差値が他の計測値よりも視感評価値と高い相関を示した。 4.CIE94(1:1)の色差式を用い、変退色用グレースケールの等級値に対応した等色差ラインを色立体中に描くことにより、色立体中での変体退色用グレースケールの適用の仕方を大まかに知ることができた。 5.変色をほとんど伴わない退色試料においては、Nc^#値とSEK等級値が視感評価値と高い相関を示した。 6.退色においては、染色堅牢度値が、変色においては色差値が視感評価値との対応がよかった。 さらに、国による視感評価値の違いを、日本、タイ、香港で、同じ試料を用いて2本のグレースケールを用いた視感評価実験を行い検討した。その結果、明らかに国による違いが見出された。グレースケールによる視感評価では、個人だけでなく国による違いも避けられないので、インターネットショップが発達してきた今日、世界共通の評価値が必要となる。それには、従来の視感評価に代わり計測評価が求められるが、これまでの研究成果より、汚染、変退色、退色とそれぞれの計測評価値の導き出し方の方向性を見出すことができた。
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