日本の食生活において最も身近な香辛料であるショウガについて、その機能性成分の有効性を高める条件を得ることを目的とし、それらの成分の生成因子について検討した。 辛味成分であるジンゲロールは坑酸化活性など様々な生理活性を示す成分として知られている。まず、新ショウガより、ジンゲロールの前駆体として配膳体の検索を行った。その結果、ジンゲロール類縁体であるジンジャージオールをアグリコンとする二種の新規グルコシドを単離し、構造を決定した。さらに、合成により標準物を得、その坑酸化活性を、従来単離されているジンゲロール類と比較検討したところ、一種のグルコシドは、ジンゲロールと同等の坑酸化活性を示し、配糖体としての機能性も確認された。次に、抗菌活性や坑腫瘍活性があることで注目されているシトラールについて、未熟なショウガ(新ショウガ)と完熟貯蔵したショウガ(完熟ショウガ)とでは含量が異なる点に着目し、その生合成に関与する酵素系について検討した。新ショウガより調製した粗酵素系において、NADP依存性のアルコールデヒドロゲナーゼ(ADH)活性が認められ、ゲラニオールおよびその異性体であるネロールに特異的に作用することが判明した。ゲラニオールについては、その配糖体よりグルコシダーゼの働きで生成することも確認され、配糖体からゲラニオール、さらにシトラールへの生成経路が示唆された。次に、同時期同産地の新ショウガを市販品と同様の条件下で貯蔵し、シトラール生成と酵素活性測定を行った。その結果、成熟、貯蔵二週間において、ADH活性、グルコシダーゼ活性が極大となり、それとともにシトラール量が顕著に増加する傾向を示し、酵素活性がシトラール生成に関与していることが示唆された。 新しい機器を駆使することにより、活性成分の構造について詳細に調べることが可能になり、有用なデータを得ることができた。
|