近年、ショウガの機能性について多くの研究がなされ、ジンゲロールなどのような不揮発性成分だけでなく、ショウガの爽やかな風味に寄与する香気成分のゲラニアールとネラール(シトラールと総称)についても抗菌、抗腫瘍活性や解毒酵素誘導活性などが認められている。一方、香気成分組成において、ショウガの品種や貯蔵期間によりシトラール量の割合が変化することが知られているが、その生成機構については不明である。本研究では、未成熟のいわゆる新ショウガと成熟ショウガ貯蔵中におけるシトラール絶対量の経時的変化を調べるとともに、その生合成機構について検討し、ショウガ根茎中にプロテアーゼ以外の新たな酵素系の存在を確認した。ショウガより調製した粗酵素系において、グルコースおよびガラクトース配糖体に特異性を有するグリコシダーゼの存在を確認した。また、NADP依存性のアルコールデヒドロゲナーゼ(ADH)の存在も確認し、その至適pHが9.0であること、ゲラニオールおよびネロールに基質特異性をもつことを確認した。ゲラニオールについては、その配糖体よりグルコシダーゼの働きで生成されることも確認され、配糖体よりゲラニオール、さらにシトラールへの生成経路が示唆された。また、2種類の栽培種の根茎を用いて、収穫70日前、成熟後貯蔵0、14、30〜90日の試料について、グルコシダーゼおよびADH活性とシトラール量を測定した結果、貯蔵2週間において両酵素活性ともに極大となり、それとともにシトラール量が顕著に増加する傾向を確認した。以上のことより、両酵素系が機能性成分であるシトラール生成に関与していることが強く示唆された。両酵素とも、本研究によってショウガ中ではじめて存在が確認された。現在ADHの精製を進めているが、今後さらに精製酵素を用いて機能性成分の生成メカニズムを解明し、機能性に優れたショウガの開発または利用法に資するデータを提供したい。
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