研究概要 |
従来,米の収種時期は,主として外観の観点から決定されてきた.しかしながら,遅刈り米は収量が増しても食味が劣るなど,米の収穫時期が米飯の品質に種々の影響をあたえていることも示唆されていた.そこで,本研究では,いわゆる収穫適期(出穂後約40日)に収穫した米と,適期よりも10日間早く収穫した米(早刈り米)について,それらの米飯特性を官能評価および器機分析などから総合的に解析することにより,食味の優れた米飯を得るための米の収穫時期について検討を行うことを目的とした.いわゆる収穫適期より10日間収穫を早めた早刈り米の米飯は,適期に収穫した米の米飯よりも軟らかくて粘りがあり,米飯のテクスチャー特性が良好であった.また,早刈り米の米飯は,浸漬または炊飯過程で内在性糖質分解酵素(α-アミラーゼなど)の作用により,でんぷんからグルコース,マルトースおよびマルトトリオースを主体とするマルトオリゴ糖類が生成されるため,いわゆる適期に収穫した米の米飯よりも甘味が増して,食味が向上した.さらに,早刈り米米飯には,米飯の旨味成分の本体であるL-グルタミン酸も多く含まれていた.一方,早刈り米米飯では,前述のオリゴ糖類の増加により,保存中の米飯の糊化度およびテクスチャーの低下が遅延し,保存性が向上した.これらの結果を総合して,呈味性が高い良食味米飯を得るための収穫適期は,いわゆる収穫適期よりも10日間程度早い時期であることが明らかとなった.
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