奈良市内の1産婦人科にて、妊娠初期の妊婦45人を対象に妊娠初期および妊娠中期に妊娠中の栄養摂取、身体活動について目標を定めて介入指導を行い、目標の達成度を2週間に1回の頻度で3段階による自己評価をさせ達成度スコアとした。一方、妊娠前半期と後半期に3日間づつ摂取した全食品、摂取量、調理法を記録させ、栄養素摂取量を把握した。その他に周産期状況の調査、開始時と出産時の2回超音波法による骨密度の測定、開始時と妊娠中期と出産時の計3回、血液、尿中骨代謝指標および血清PTHホルモンを測定した。 主な成果は、 1.食品摂取達成度スコアによると、妊娠前半期、後半期ともに、肉類、卵類の蛋白質源食品の摂取量が多い程、骨密度は有意に低下した。カルシウム源食品の摂取量は、骨密度変化量と関連は認められなかったが、蛋白質摂取量に対する比(Ca/蛋白質)とすると、妊娠前期、後期ともに骨密度変化率と有意の正相関を示し、蛋白質量に対してCa摂取量が少ない程、骨密度低下が大きいことが判明した。 2.3日間の栄養素摂取量においても、妊娠中の骨密度変化率に対して、蛋白質とCa摂取量の比とした場合、1と同様の関係が認められた。従って、骨密度保持には蛋白質量に対するCa摂取量が重要である。また、妊娠後期ではCa摂取量のみでも骨密度変化率と有意の正相関、即ちCa摂取量が多い程骨密度低下が少ないという結果が得られ、妊娠中のCa摂取量の増大は骨密度保持に有効である。 3.出産時の骨密度低下量と出産児の身長、体重とは有意の負相関が見られ、骨からのCaが胎児に移行したことが推測された。 4.カルシウム摂取量が少ない場合、血清中PTHが高く、尿中Hydroxyprolineが高く、骨吸収が亢進することが示され、妊娠中のカルシウム需要には骨組織のCaが寄与していることが判明した。
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