実験動物としてウィスター系の雄ラットを用いて環境汚染物質による代謝変動と毒性に対するミオイノシトール及びフィチン酸摂取の影響について検討を加えた。まず、環境汚染物質として殺虫剤DDTを基本食に0.05%添加し、0.1%ミオイノシトールの影響について飼育期間を2週間として検討を加えた。DDT摂取により肝臓の総脂質、トリグリセリド、コレステロール含量および血清コレステロール濃度が有意に増加し、この増加は一般的にミオイノシトールにより抑制された。さらに、DDT摂取によるラット肝臓のグルコース-6-リン酸脱水素酵素およびリンゴ酸酵素活性の上昇もミオイノシトールにより有意に抑制された。以上の実験より、ミオイノシトールのDDT摂取下での肝臓脂質抑制効果は、少なくとも部分的に肝臓での脂肪酸合成の抑制が関係していているものと推定した。次に、DDTの添加レベルを0.13%と高くし、成長の遅延が生じるような実験条件下での食餌フィチン酸の影響について検討を加えた。フィチン酸の添加レベルも通常摂取レベルよりも高い1.5%とした。DDT摂取による成長の遅延に対してはフィチン酸の顕著な効果は見られなかったが、DDTによる肝臓脂質の蓄積は、フィチン酸により対照群のレベルにまで緩和された。また、DDT摂取による血清GOTやGPT活性の上昇が、食餌フィチン酸により抑制される傾向が見られた。本年度の研究より、DDTによる肝臓脂質の蓄積や脂肪酸合成酵素活性の亢進、肝臓障害などが、ミオイノシトールおよびミオイノシトールのリン酸化誘導体であるフィチン酸により抑制される可能性が示された。 平成12年度は、11年度にやり残した内容も含め、DDTや他の環境汚染物質摂取下での性ホルモン、薬物代謝系酵素活性、イノシトール代謝などへの食餌ミオイノシトールやフィチン酸の影響について本格的に検討する。
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