研究概要 |
実験動物としてウイスター系の雄ラットを用いて環境汚染物質による代謝変動と毒性に対するミオイノシトール及びフィチン酸摂取の影響について検討を加えた。環境汚染物質は,平成11年度の研究で用いたDDTを食餌に0.08%添加した。本年度は,まず,食餌ミオイノシトールとフィチン酸が,ほぼ同様にDDT摂取による肝臓脂肪の蓄積や肝臓の脂肪酸合成関連酵素であるグルコース-6-リン酸脱水素酵素やリンゴ酸酵素活性の増大を抑制することを明かとした。次に,DDT摂取によるラット肝臓のチトクロームP-450含量,薬物代謝酵素系のPhase I酵素であるアミノピリン脱メチル酵素活性やPhaseII酵素であるグルタチオンS-転移酵素活性の活性などの増大が,食餌ミオイノシトールおよびフィチン酸により促進される傾向を示すことを明かとした。また,本研究の計画には予定していない内容であったが,本実験の過程でDDT摂取による代謝変動や害作用が炭水化物源として澱粉を与えた場合と比較してショ糖を与えた場合の方が,顕著になることが明かとなった。この事実はDDTなどの環境汚染物質の作用が,食餌炭水化物の質により影響されることを示している。さらに,DDT摂取ラットに対する食餌ミオイノシトールやフィチン酸の効果についても,食餌中にコリンを添加する場合としない場合とで違いが見られることも明らかとなった。これらの現象については,さらに検討を加える予定である。 平成13年度は,DDTや他の環境汚染物質による性ホルモンや睾丸への影響に着目してミオイノシトールやフィチン酸の効果を検討する。また,環境汚染物質摂取下での体内のミオイノシトール含量やミオイノシトール代謝について本格的に検討し,実際の食生活でどの程度のミオイノシトールやフィチン酸を摂取しているか測定する。
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