本研究においては、ヒトが日常的に摂取する茶葉を含む植物抽出物あるいは今後利用できると考える海藻抽出物より抗酸化性、ラジカル捕捉活性、抗変異原性を示す有効成分の分離を行った。それら粗抽出物および含有されることが予想される標準物質について細菌、動物個体における異物(DDT、benzo(a)pyrene、nitrosodimethylamine、nitrosomorpholineなど)の吸収・代謝・排泄に対する影響を検討した。 1.アナアオサ(Ulra pertusa kjellman)のメタノール抽出物は0.5〜5.0mg/mlで用量依存的に抗酸化性を示した。また、メタノール抽出物のラジカル捕捉活性は(ED_<50>)は0.7〜1.6mg/mlであった。さらにメタノール抽出物は焼き焦げ由来のMeIQxおよびTrp-P-1の変異原性を強く抑制した。 2.緑茶抽出物はニトロソモルホリンの変異原性発現を抑制しており、プレート当たり0.5mgで34%、1.0mgでは70%阻害した。亜硝酸塩とモルホリン、緑茶抽出液をラットの投与すると濃度依存的にニトロソモルホリンの生成が抑制された。 3.ケルセチン、ルチンなどのフラボノイド類、キチン、キトサン、セルロースなどの食物繊維は発がん性・内分泌撹乱性を有するDDTを吸着する作用を発現したことから、変異・発がん物質の生体外への排泄にはこれら植物成分、特にフラボノイド類の摂取が有効であると考えた。 以上の実験より抗酸化性、ラジカル捕捉活性を有する植物成分が有害性有機化合物の吸収・代謝・排泄を促進、または遅延させることによりin vitro、in vivoで毒性発現を緩和することが明らかになった。本研究を遂行することにより、主としてフラボノイド類の吸収・代謝についても多くの知見を得ることができた。
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