食物の形態はテクスチャーと深く関わっているので、ゾル状食品に限定し、食品の形態およびテクスチャーを変化させ、そのレオロジー的性質を検討した。また、咀嚼・嚥下される過程の飲み込み易さに関わる要因を捉えために、官能評価の手法と嚥下造影の手法を取り入れ検討を行った。 硬さが異なる粘稠ゾル試料では、試料の硬さが飲み込み特性に顕著に影響をおよぼしていることが認められた。また、口腔感覚のみで推測した飲み込み易さは、試料を実際に嚥下して評価した飲み込み易さと同様の評価が得られたことより、粘稠ゾル試料の飲み込み易さは、嚥下する前の口腔感覚によって既に予測されているといえる。さらに、嚥下造影検査の結果、粘稠ゾル食塊の前端速度は力学的特性の影響を顕著に受け、軟らかく粘性率の低い粘稠ゾル食塊であるほど前端速度は速いことが示唆された。一方、粘稠ゾル食塊の後端速度は試料間に有意差は無く、食塊の力学的特性の影響は認められなかった。また、咽頭における試料食塊の通過時間にも有意な差が認められなかった。このことより、嚥下する際、硬く、粘性率の高い粘稠ゾル食塊に対して、軟らかく、粘性率の低い粘稠ゾル食塊よりも、より多くの嚥下努力が加わっているといえる。この嚥下努力とは、嚥下する際の舌の駆動力によるものと考えられ、硬く、流れにくい粘稠ゾル食塊の後端速度を舌の駆動力により速めることで、咽頭における食塊の通過時間の差を少なくしていると推測された。以上の結果より、粘稠ゾル試料の力学的特性を測定することが、食塊の前端速度を知るのに有効であることが示唆された。また、健常な成人は、口腔中で食塊を保持することにより、口腔感覚が食塊の力学的特性や飲み込み特性を正確に把握し、その結果、舌の駆動力を規定し、その後の嚥下動態を規定していることが推測された。 そこで、増粘剤をデンプンとグアーガムとし、それぞれ4段階の硬さに調整した試料を用いて飲み込み特性と力学特性の関係を検討した。デンプンおよびグアーガム試料ともに硬さが増加するにつれ飲み込みにくくなることが示された。ヨーグルト程度の硬さでは、グアーガム試料の方がべたつき飲み込みにくいと評価されたが、マッシュポテト程度の硬さになると、逆にグアガム試料の方が飲み込みやすいと評価された。飲み込み特性と動的粘弾性の結果を併せて考えると、硬さおよび貯蔵弾性率と飲み込み特性の関係は同様の傾向を示し、硬く、貯蔵弾性率が高い試料ほど飲み込みにくい傾向が見られた。
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