研究概要 |
本研究は,重要な食糧である蕎麦について,その加工食品の嗜好特性にかかわる物性を成分との関係から解析し,得られた結果から,蕎麦加工食品の示す物性の分子論的基盤の確立を計ることを試みたものである。ロール式連続製粉法によって調製された多種類の蕎麦粉分画物について,物性と成分を分析したところ,総タンパク質含量と咀嚼性等の物性値との間に高い相関関係が認められ,蕎麦タンパク質が物性に関与する重要な因子であることを明確にすることができた。蕎麦の石臼ひき粉(全層粉,表層粉),内層粉等について,各蕎麦粉から手打ちや製麺機によって蕎麦麺をつくり,本補助金で購入したクリープメータ物性試験システム等を用いて物性を解析し,併せて成分について分析した。その結果,各種蕎麦粉は破断特性等の物性上に明確な特徴を示すことがわかった。一方,蕎麦麺には,いわゆる挽き立て,打ち立て,ゆでたての三たてという言い習わしがあり,このよりにして調製された麺が美味だといわれるが,これらに関する研究を行った。その結果,蕎麦粉・麺の物性(破断特性等)が経時的・経日的に変化する現象などを観察することができ,またこれらの現象が主として成分(デンプン,タンパク質等)やその構造変化等に基ブいていると考えられる成果が得られた。また,このような物性変化に関係していると考えられる形態変化が走査電子顕微鏡によって観察された。蕎麦麺の官能検査を実施して物性との関係について解析したところ,麺の嗜好特性には幾つかの物性値が重要であることが示唆されたが,これらの点については成分との関係も含めて平成12年度も引き続き詳細に研究を続ける予定である。上記の通り,本研究の成果を通じて,蕎麦加工食品の物性には成分が量的にまた質的に関与しているものと推論され,当該物性の分子論的基盤に関する基礎的知見を示唆することができた。
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