研究概要 |
本研究は、血栓症に予防効果を示す機能性食品の関発を目的として、担子菌をはじめとする各種微生物の線溶酵素のスクリーニングを行った。食用として安全性の面から、発酵工業や発酵食品生産に用いられている細菌68菌株、酵母34菌株、カビ11菌株、担子菌19菌株をそのスクリーニングの対象とした。これら各種菌株は、主としてモルツ培地に培養して、集菌後、細胞破壊、遠心分離により得た上澄液を線溶酵索の検索に用いた。線溶活性は、フィプリン平板における溶解面積の測定から求めた。 その結果、細菌では、Bacillus属のものが強力であった。この結果は、納豆菌について報告されていることと一致する。しかし、Bacterium属,Brevibacterium属やCorynebacterium属の細菌にもBacillus属のものと同様の強力な線溶活性がみられた。カビでは、Aspergillus属とRhizopus属のものに線溶活性がみられたが、その活性はBacillus属のものに比較して1/10程度であった。酵母における線溶活性は、Cryptococcus属のものが顕著であった。担子菌においては、試験した菌株のほとんどに線溶活性がみられた。その中でも、とくに強力な活性を示したものはPleurotus属のものであり、細菌のBacillus属の示す線溶活性と同等であった。試験に用いた担子菌には自然界から新たに分離した野生株も含まれ、その中には栽培種のものよりも強力な線溶活性を示すものがあった。特にタモギタケの線溶活性は強力であったが、酵素の安定性(40℃で失活)が難点であった。しかし、栽培種のエリンギや抗トロンビン活性をもつ野生株の担子菌に強力な線溶活性か見出され、血栓症予防を目的とする食品の開発利用研究が推進できることとなった。 今後、担子菌の線溶酵素を対象とし、酵素の分離・精製により酵素の性質を知り、人工栽培の可能な担子菌との細胞融合をはかり、線溶活性をもつ食品の開発を研究計画の課題としたい。
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