研究概要 |
血栓症に予防効果を示す機能性食品の開発を目的として、きのこの内、担子菌に血栓溶解酵素の給源を求めた。担子菌はその菌糸体の液体培養を、2%モルツ培地(三角フラスコ)で、25℃、1-2週間、振とうを行った。液体培養中の線溶活性は人工血栓(フィブリン平板)溶解法で測定し、プロテアーゼ活性はカゼイン分解法より求めた。 その結果、各種の担子菌について両活性をしらべた結果、栽培種および野生種のタモギタケと野生種のシメジの仲間(菌株No.W510)に、強力な両活性が認められた。両菌種ともセリン系プロテアーゼであり、酵素の分子量は、各々32,000、26,000であった。タモギタケの酵素は熱不安定であったが、野生株No.W510の酵素は60℃までは安定であった。野生株No.W510の酵素の特徴はエラスターゼ活性が強力で、作用pHは、10-11のアルカリ側にあった。また、N末端アミノ酸分析の結果、本酵素はStreptomyces griseusのprotease CおよびAcromo bacter lyticusのα-lytic proteaseに各々81%、66%の相同を示した。 一方、マスタケの野生種(No.W8)は強力な抗トロンビン活性物質を生産する。野生種No.W8の人工栽培が困難なためブナシメジとの細胞融合の結果、乳酸脱水素酵素を指標にしたアイソザイムパターンで両親株と一致する融合株が得られた。得られた融古株には、トロンビン時間(TT)の顕著な増大に示される抗トロンビン活性をもつことがわかった。 食品への応用の観点から、耐熱性の酵素の検索を行ったところ、タイ国産の担子菌やタイ国で採集した温泉水から分離した微生物(Bacillus属細菌)に線溶活性を示すものが得られた。 今後は、上記記載の線溶活性を示す菌株について、米、麦、大豆、牛乳等各種食品素材を用いての食品の創製を試みる。
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