「咀嚼」とくに堅い食べ物を摂取することは、身体にとってよいとされているが、しかし、このことは栄養・生化学的には証明されていない。そこで、食べ物の固さの違いが脂質代謝への影響を検討した。 同一栄養成分を含む組成で「固形」、「粉末」、「流動」食を作製し、離乳直後より摂取したラットの血清・肝臓における脂質代謝を中心に週齢、性別及び新生仔について調べた。血清および肝臓の脂質濃度(とくに、コレステロール)は流動食>粉末食>固形食となり、明らかに固形食が脂質代謝に関して良い影響を与えた。また、週齢による影響を検討するために、24週齢目と48齢目の比較では、固形食で差がなく流動食・粉末食で加齢により上昇した。性別の違いの影響は雄よりも雌のほうで強く現れた。世代への影響をみるため、「固形食」・「粉末食」・「流動食」を摂取した雄と雌を交配させ出産した10日目の新生仔について検討した。肝臓の脂質量は各飼料を比べても差が認められなかったが血清の脂質濃度は、乳中のコレステロール、総脂質量に差がないにもかかわらず、母体の血清脂質濃度と同様に流動食>粉末食>固形食となった。以上の原因は、血清および皮下脂肪組織のリパーゼ活性、血清および脳中のカテコールアミン濃度、糖負荷試験による血清インスリン濃度のいずれもが固形食で高くなっており、これらの因子が深くかかわっていることを示唆するものと思われた。 摂取する食べ物の固さの違いが脂質代謝に影響を与え、固形食が最も理想的な食べ物の形態であることが分かった。
|