研究概要 |
過疎地域は、高齢化が急速に進行しているにもかかわらず、保健医療施設や福祉サービス、道路や商店などの生活条件は厳しい。高齢者が独立して生活する時に日々の食生活の質がどのように保たれているかは、暮らしやすさの度合を測る尺度となる。この生活状況を見るために食生活を中心に調査を行った。 今年度は、過疎地域に囲まれた人口28,000人の名寄市の高齢者世帯46世帯を、老人クラブに所属し高齢者のみの独立した世帯で公的な援助を受けていない層(A)と社会福祉協議会のヘルパーの援助を部分的に受けている層(B)に分けて聞き取り調査を行った。A層は、健康状態は万全ではなくても地域で友人や趣味をもち、戸外で積極的に活動している高齢者たちである。一方、B層は、健康状態がかなり悪化して買い物にも不自由している。A層は食生活にも意欲を見せ、規則的で若者よりもかなり質の高い日本的食生活を送っている例が多い。それに対して、B層は食生活にかなりの問題が散見された。同じ高齢者と言っても、両層の二極分解が見られる。小さな街の利点として、家庭菜園をほとんどの世帯がもち、趣味と実益を兼ねて楽しんでいるが、少数ながら「菜園の管理が苦痛である」という女性(妻)もいる。いずれの層においても、買い物の不便さ、道の歩きにくさなど生活上の苦情や要望等があったが、生活費増額の要求は少なかった。一部で配食サービスへの期待は大きい。 来年度以降は、さらに過疎化が進み、交通不便な周辺自治体での聞き取り調査を行う予定である。今後は配食サービスに焦点をあてた調査、さらに、高齢者特有の消費者問題(健康食品の無料サービスを行い、高価な布団などの商品を販売するなどの新たな生活問題の事例)にも焦点をあてていきたい。
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