研究概要 |
本年度は、さらに過疎化が進行している地域で、在宅高齢者の比率の高い音威子府村において、65歳以上の高齢者のみで構成されている世帯(110戸)の悉皆調査を行った。 音威子府村は、人口1,334人(2000年12月現在)の北海道で最も人口規模の小さい村のひとつである。農業主体の山村で、ほとんどの高齢者世帯は在宅である。村の高齢者生活福祉センター(施設の一部が夫婦あるいは単身高齢者の居住区になっている)を始め、公営住宅の入居、村が遠隔地で農業をやっていた人のために用意した土地など、居住条件は都市部よりも恵まれている面もある。また、交通が不便なので、自立している在宅高齢者の通院介護のためのヘルパー派遣などを村独自で行っている。 調査は食生活を中心に、健康で自律的なリズムをもった生活が送れているか、家族や近所の人との関わり方はどうか、日常生活で困難なことや楽しみは何か、生活環境にどんな要望があるのかなど、訪問して聞き取りをした(94世帯、147人の協力が得られた)。 概述すると、食生活は全体的に塩分が多め、変化は少ないが昔ながらの手づくりの和食で、ほとんどが食事を中心にして生活のリズムを規則正しく作っている。しかし、独り暮らしの数人については、食事の不規則さから生活のリズムが失われ、次第に人ともつき合わなくなって、アルコール漬けにまで進んでいるケースもある。健康状態は深刻な病気や慢性的病気に悩んでいる人が85%で、必要な水準と現実の医療水準とは乖離している。将来の健康状態と生活についての不安も大きい。 しかし、生活環境や生活条件に対する関心は高く、生活向上志向を失っていない高齢者が多いことは、よく馴染んだ地域で在宅で生活できていることと深く関連していると思われる。
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