研究概要 |
1)水分量を広範囲に変え得る半固形状の食材モデル系の調製: 本研究課題に適合する測定対象試料として,小麦粉とアルギン酸ナトリウムからなる固体相を水とコーン油からなる液体相中に分散させた系を試作し,半固形性を保ちながら水分量を10.1%から82.5%の範囲で任意に調節し得る加熱用食材モデル系を調製した.水分量が50%以上の本モデル系を調製するに当たり,海藻多糖類の一種であるアルギン酸のナトリウム塩の使用はきわめて有効であった. 2)食材モデル系の熱物性及び力学物性: 熱伝導率,熱容量及び密度を実測して求めた上記食材モデル系の熱拡散率は,系の水分量が10.1%から60%に増すとともに増大するが(0.66×10^<-7>m^2/s→1.32×10^<-7>m^2/s),以後水分量が増しても熱拡散率に有意な変化が見られないことから,多量の水はアルギン酸ナトリウムに結合して存在することが予測された.なおモデル系の力学物性については測定装置の設営が遅れたため,応力緩和の測定を目指して当該装置を目下調整中である. 3)食材系加熱装置の改良と食材内部熱移動速度の測定: 加熱中の食材内部の温度変化を加熱面から垂直一次元(x軸)方向に沿って追跡するための既設装置を改良し,加熱面からの温度測定点を増設して系内部の温度勾配を一層広範囲に観測し得るようにした.その結果,熱媒体の種類やx軸上の温度測定位置によらず,加熱時間と試料温度との関係は遅延時間τを用いて表わし得ること,及び遅延時間τとx軸上の距離との間に1/τ(x)=A・x^<-B>なる関係が成立することを見出した.ここに,A及びBはそれぞれ熱媒体から系内部への熱伝達,及び試料内部の熱伝導にかかわる定数である.
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