研究概要 |
J. H. Weisburger ら ^<1)>は日本の水産加工品である塩漬けサンマ開きより胃がん誘発化合物の2-chloro-4-methylthiobutanoic acid(以下、CMBA)を検出した。このCMBAはメチオニンと食品添加物として使用される亜硝酸ナトリウムおよび食塩の存在下で生成されるという。 そこで、我々は味噌より分離された耐塩性酵母を用いてこのCMBAの削減や除去を試みた。 耐塩性酵母によるCMBAの削減や除去を解析するにあたり、サルモネラ菌のヒスチジン要求性変異株であるSalmonella tryphimurium TA100を用いる変異原性試験、すなわち、Ames試験を用いた。その結果、耐塩性酵母のZygosaccharomyces rouxii S-2Bの濃縮抽出液の添加量に依存して復帰突然変異コロニー数が減少し、50μgのCMBAに対し30μl(菌数約1.2×10^7個に相当)の濃縮抽出液の添加で約30%の減少効果が認められた。 さらに、酵母菌体とCMBAとの接触によるCMBAの抑制効果について検討した。供試菌株として、耐塩性酵母のZygosaccharomyces rouxii S96と、非耐塩性酵母である清酒酵母のSaccharomyces cerevisiae RIB6002(協会7号)を用い、両株の酵母菌自体をCMBAと0、0.5、3、および24時間接触させた。その結果、両菌株とも接触時間の経過とともに、CMBAを減少させることが確認された。その減少率は、接触時間24時間で、耐塩性酵母のZ.rouxii S96が29.7%、清酒酵母のS.cerevisiaeが14.2%であった。そして、この現象は酵母細胞表面の帯電状態が正のため、CMBAが酵母細胞表面に吸着されたと考察した。これらの結果から、耐塩性酵母によるメチオニン起源の胃がん誘発化合物CMBAの削減や除去という研究の目的を達成することができた。 ^1)Wei Chen, John H. Weisburger et. al. : NATURE, 374,599(1995)
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