研究概要 |
運動によってたんぱく質必要量が変化するか否かを明らかにするため、ラットに遊泳による運動負荷を与え、窒素出納、アミノ酸代謝酵素の一つでたんぱく質栄養に鋭敏に応答するセリン脱水酵素(SDH)活性、および血液成分の変化を求めることによって検討した。 たんぱく質必要量は加齢とともに変化するため、初めに4〜15週齢のラットに25%カゼイン食を与え窒素出納を比較した。その結果窒素出納は週齢とともに減少し、11週齢以降でほぼ一定の値となることが明らかとなった。このとき、SDH活性は窒素出納と逆相関を示し、余剰アミノ酸がシグナルとなりSDH誘導することが示唆された。次に最も窒素出納の大きい4週齢のラットに、それぞれに6,9,12,15,18,21%カゼイン食を与え流水遊泳槽で1日20分、5日間に渡り遊泳を課し、その後の3日間の糞尿を採取し、窒素出納を求めた。なお、静置群の糞尿も同時に採取し、体重、摂食量は毎日記録した。また、実験最終日に屠殺し、肝臓のSDH活性を測定した。求めた窒素出納値を摂取窒素量に対し、プロットすると2群とも摂取窒素量にともない直線的に増加した。この直線を摂取窒素量0に外挿し、見かけの不可避損失窒素量を求めたところ、運動群では62mgN静置群では47mgNとなった。さらに、摂食量と体重増加率を比較するとカゼイン含量9%と12%のとき2群間で差が見られ、両者とも運動群で大きくなった。また、肝臓のSDH活性も運動群で高くなる傾向が見られた。以上の結果は、運動によってたんぱく質代謝が亢進し、それにともない必要量も増加することを示唆している。また、9%、12%カゼイン食で体重増加率が運動群で大きくなったが、これは運動による摂食量の増加とともに、たんぱく質利用効率も高くなったためと考えられた。なお、両群間で血清成分に有意な変化は認められなかった。
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