研究概要 |
本年度は小腸粘膜バリアを介するアレルゲンの取り込み機構に関して以下の検討を行った。 1.アレルゲンの小腸粘膜透過動態の観測 (1)透過性のあるフィルター上で単層培養したCaco-2細胞を用い,粘膜透過性とアレルゲンの輸送に及ぼすインターフェロン(IFN)の影響を観察した.単層Caco-2細胞の粘膜透過性を経上皮粘膜電気抵抗と低分子量色素(ルシファーイエロー)透過性で測定すると,IFNで刺激した細胞で亢進していた。この時の卵アレルギーの代表的な原因アレルゲンであるオボアルブミン(OVA)の粘膜透過性の亢進も観察された。 (2)漿膜側に通過したOVAをウエスタンプロッティング法で解析すると,Caco-2細胞通過時に低分子量のペプチド断片に限定分解されることが明らかになった。さらにOVAの低分子ペプチド断片への変換はIFN処理により促進された。 (3)Caco-2細胞によるOVAの限定分解はカテプシンB,D阻害剤により抑制されるが,これらの活性に対しIFN処理は影響しなかった。 2.免疫組織法によるOVAの細胞内への取り込みの測定 コラーゲンコートしたチャンバースライド上で2週間培養したCaco-2細胞をOVAとインキュベートした後,細胞内に取り込まれたOVAをグルコースオキシダーゼ法(Vectastain ABC-GOキット)で検出すると,細胞内へのOVAの取り込みが観察され,その程度はIFN刺激細胞で著しかった。 3.今後の展開 本年度の研究は小腸粘膜細胞を介する食物アレルゲンの輸送が,単に上皮細胞間隙のリークではなく,小腸上皮細胞への取り込みと細胞内プロセッシングに依存していることを明らかにした。今後フローサイトリーを用い,小腸細胞へのアレルゲンの取り込みをダイレクトに測定する予定である。
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