研究概要 |
平成11,12年度の本研究報告において,1)ヒト大腸腺癌由来細胞株Caco-2細胞を透過性のあるフィルター上で培養した後,インターフェロン-γ(IFN-γ)刺激すると、オボアルブミン(OVA)の小腸上皮細胞通過量が増大し,さらに,2)FITC-OVAと120分間インキュベートした細胞をフローサイトメーターを用いて検討すると,FITC-OVAを取り込ませていない細胞に比し蛍光強度の強い細胞群の割合が増大し,蛍光強度の増大した細胞群には蛍光強度の弱い細胞群と強い細胞群が認められることを報告した。一方,FITC-デキストランとインキュベートした場合には蛍光強度の弱い細胞群が観察されることを認めた。前年度の報告では,FITC-OVA取り込みの際に観察される蛍光強度の弱い細胞群と強い細胞群を,それぞれ細胞表面への結合(binding)と,細胞内蓄積(incorporating)に相当する可能性を想定したが,それを指示する明確な証拠は得られていなかった。そこで,本年度の研究は,Caco-2細胞によるFITC-OVAの取り込みを細胞表面への結合と細胞内蓄積に分けて観察した。 フローサイトメトリーによるFITC-OVAとFITC-DXの取り込み 約3週間培養したCaco-2細胞をFITC-OVAあるいはFITC-デキストリン(100μg/ml)と37℃あるいは4℃で4時間反応させ後,細胞内への取り込みの程度をフローサイトメーターを用いて解析した。 37℃FITC-OVAと4時間インキュベートした細胞はFITC-OVAを取り込ませていない細胞に比し蛍光強度の増強が認められ,蛍光強度の増大した細胞群は,蛍光強度の弱い細胞群と強い細胞群に分けられた。一方,FITC-デキストランと反応させた場合には,蛍光強度の弱い単一のピークが観察された。ところが,4℃で反応させた場合,FITC-OVAの場合もFITC-デキストランの場合もいずれも細胞の蛍光強度の増加は全く観察されなかった。このことは,FITC-OVA, FITC-デキストランいずれも,細胞表面への結合(binding)ではなく,細胞内蓄積(incorporating)に相当することを示すものである。さらにFITC-OVAを取り込みさせた場合,二相性の蛍光強度が観察されることは,取り込まれたOVAの細胞内蓄積がデキストランに比し著しいことを示している。
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