ゴマ種子の食用の歴史は長く、世界各地域には独自の食事文化が築かれてきた。日本ではすり鉢とすりこぎによりさまざまな状態に磨砕したすりゴマが特徴的と考えられた。しかしながら、すりゴマについては調理科学的に全く解明されておらず、基礎的な解明を試みた。 試料調製は、ゴマ種子を電気オーブンにより200℃で10分間焙煎し、電動磨砕機により40回転/分で5〜50分間擂り、すりゴマを得た。すりゴマにその重量に対して12.5〜100%の水量を加えて混合し、水分散系試料を得た。流動特性をコーンプレート型粘度計、硬さおよび付着度(付着性/硬さ)をテクスチュロメータで測定した。 流動特性は、15分間以上磨砕したすりゴマに認められた。磨砕時間の延長に伴い、粘度が低下し、流動性指数は増加した。一方、水分散系試料にはいずれも流動特性が認められなかった。そこで硬さおよび付着度を測定すると、いずれの磨砕時間のすりゴマも12.5%加水のとき最も硬く、加水前より硬かった。磨砕時間15分以上では25〜50%加水のときも添加により硬くなった。硬くなった後は加水量の増加に伴い軟化した。付着度については、磨砕時間1〜10分間のすりゴマはどの加水量でも、また15分間以上のすりゴマは100%加水のとき、加水前より増加した。同一加水量において、付着度と磨砕時間は正の相関(p<0.05)を示した。 水分散系試料を遠心分離し、分離液中の水と油の比を測定した結果、分離液量は加水量に伴って増加した。また加水量が50%まではほとんどが油で水は1%以下であったが、100%になると水の分離量が顕著に増加した。光顕により、15分間磨砕したすりゴマに100%加水した際、固形物中に油滴が分散している像が観察された。すりゴマに加えた水が固形物に吸収され、固形物粒子間に凝集力を生じ、これが連続相になることが、水分散系試料の物性やテクスチャーに影響すると考えられた。
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