研究概要 |
石器の原材産地分析の結果では、北朝鮮の会寧城外遺跡で主体的に使用されている黒曜石と同質の原材は約1,500Km離れたフーミ遺跡で使用され、国内では北海道白滝産黒曜石が神奈川県東海大学構内遺跡に伝播している。また、青森県大平山元I遺跡の旧石器時代に良質の深浦産黒曜石が使用されていることが明らかになり、深浦産黒曜石は約700Km離れた富山県立美遺跡に伝播していることから、旧石器時代における両遺跡の関係が注目され、また、この時代が深浦産黒曜石の水和層の厚さが約6ミクロンに相当することも明らかになった。縄文時代では沖縄県島尻群渡嘉敷村阿波連貝塚出土の黒曜石に佐賀県腰岳産黒曜石の使用が確認され、西北九州と沖縄の両地域間には古代交流が存在したことが推定された。石器原材の伝播に伴って文化とか生活情報が伝わると考えると、沖縄の古代人が西北九州の生活情報、文化などを入手していたと推測できる。ヒスイ製玉類の結果では、北海道から九州南部にかけて、糸魚川産ヒスイが使用されているが、新たに、沖縄県糸満市兼城上原2遺跡の縄文時代後期のヒスイ製遺物および北谷町クマヤー遺跡出土ヒスイ製垂玉に新潟県糸魚川産原石が使用されていることが明らかになった。この伝播距離を外国に伸ばすと黄河河口域からチチハル、アムール河中域、下流付近に達する距離である。また、鹿児島県の玉造遺跡で使用された産地不明の石材を用いた、玉類が島根県ヨレ遺跡、岐阜県西田遺跡、大阪府向出遺跡に伝播したことを明らかにした。碧玉製玉類では香川県野牛遺跡の管玉に佐渡猿八産原石、滋賀県八夫遺跡の管玉には女代南B遺物群の石材、茨城県東大沼古墳群、岐阜県船来山古墳群の管玉には島根県花仙山産碧玉が使用されていたことが明らかになった。
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