石器原材産地調査では、北海道、奥尻島幌内川で石器加工可能な大きさの黒曜石が発見され、幌内川群を作り使用圏を明らかにできるようにした。また安山岩製打製石器の原材産地では、新たに発見された鳥取県三朝町の坂本群が、蒜山の後期旧石器時代の笹畝第2遺跡、牧野遺跡、東遺跡で使用されていることが判明し、また原産地不明の遺物原材で笹畝2No.2とNo.3の遺物群を追加した。島根県木次町の下山遺物群を追加した。黒曜石群では、204個の原石・遺物群が、サヌカイト・安山岩群では108個がそれぞれ確立され産地分析の信頼性がさらに向上した。玉類では東京都939遺跡出土の国内初の黒曜石勾玉に和田峠産黒曜石の使用を明らかにした。碧玉製玉類のでは、主に弥生時代中期に日本全土で使用されている女代南(B)遺物群あ原材産地の解明で、石川県那谷地区産碧玉を追求したが、蛍光X線分析は一致するが、ESR分析が少し異なり決定にいたらず、より詳細な原石産地調査が必要である。ヒスイ製玉類では、硬玉と軟玉の弁別にESR分析が有効なことを見つけた。また軟玉系産地間で、Mnイオン信号の分裂の仕方が異なり、この信号で産地間分類の可能性を見つけた。 縄文後晩期に九州南部で主に使用されている結晶片岩様緑色岩製の玉類は、島根県のヨレ、高田遺跡、岡山県の久田原、吉野口遺跡、兵庫県の的場遺跡など西日本一帯での使用を明らかにした。非破壊分析による水和層測定では北海道の白滝、オルバベツ、栄浜遺跡出土遺物で行い、また、島根県隠岐の東船遺跡出土の旧石器時代の久見原石使用黒曜石遺物70個について、国内初の水和層測定が行われ、約4.5〜5ミクロンの水和層を検出した。今後、久見産黒曜石の水和速度を決定して実年代換算が出来るようにする必要がある。
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