弥生時代から古墳時代の遺跡から出土したガラスについて、色調ごとの材質的特徴について調査した。その結果、弥生時代のアルカリ珪酸塩ガラスについては、銅イオンによって着色された淡青色ガラスとコバルトイオンによって着色された青紺色ガラスがそのほとんどを占めていた。なかでも北部九州を中心とする地域では、淡青色と青紺色のガラスの出現比率はほぼ同等であるのに対して、京都府北部から畿内を中心とする地域では淡青色の比率が高く、淡青色:青紺色はほぼ4:1になることが明らかになり、ガラスの供給や流通が九州とは異なっていることが明らかになりつつある。いっぽう、鉛バリウムガラスは銅イオンによって着色された緑色系のものが圧倒的多数を占めており、特に北部九州に多い傾向がある。しかし、弥生時代後期後半頃には一時的ではあるが、京都北部・畿内に急激に増加していたことが明らかになってきた。 本研究の大きな成果の一つに、従来から人工顔料として知られていたHan-Blue(CuO/CaO/4SiO_2)を青色の鉛バリウムガラスから発見したことである。日本ではもとより、世界的にもはじめての発見である。これらの事実から、人工顔料の技術はガラスと密接な関係にあることが推定された。今後さらに詳しい調査・研究が必要となる。 古墳時代は多彩な色調のガラスが流通すると言われていたが、弥生時代の後期後半からすでに一部地域ではこれらの現象が表れている事も明らかとなった。特に、インドパシフィック系に属するムチサラ(赤色ガラス小玉)は弥生時代の末頃に一部で発見されているが、その後流通は途絶えて古墳時代の中期頃から後期に再び多量に発見されており、流通と交易を論じるには重要な遺物である。
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