(1)出土木材試料を、アセトンならびにエタノール溶媒にそれぞれ2週間浸漬したのち、チャンバー内で超臨界二酸化炭素に溶媒を置換して、超臨界点乾燥をおこなった。置換溶媒としてはアセトンよりもエタノールを用いた方が寸法変化が少ないことから、エタノールの方が置換溶媒として適しているものといえる。超臨界点乾燥法は出土木材の寸法変化をほとんど起こすことなく乾燥をおこなうことができる有効な方法であることが明らかとなった。今後、さらにメチルアルコールなどの他の有機溶媒についても検討をおこなう予定である。 (2)エタノールを用い、溶媒置換時間、試料の大きさ、ならびに二酸化炭素抽出時間が超臨界点乾燥により乾燥した試料の寸法安定性に対して及ぼす影響について検討した。その結果、溶媒置換時間を長く取ることにより寸法安定性が向上すること、試料の大きさが大きいものほど二酸化炭素抽出時間を長く取る必要があることなどが明らかとなった。 (3)出土木材中でゲル化する含浸薬剤について、アルギン酸、加水分解性ポリウレタンゲルなどを検討した。しかしながら、アルギン酸については、アルコールに不溶であるため、現実的には超臨界点乾燥に不適であること、加水分解性ポリウレタンゲルについては、ゲルの調製が煩雑でコスト的にも高額となることなどの理由により、これに代わるゲルを模索している。強化剤としての含浸薬剤という観点から、ゲル以外のものについても今後検討を加えていく必要がある。 これらの結果については、日本文化財科学会第17回大会で発表をおこなう予定である。
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