研究課題/領域番号 |
11680167
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
文化財科学
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研究機関 | 独立行政法人文化財研究所奈良文化財研究所 (2001) 奈良国立文化財研究所 (1999-2000) |
研究代表者 |
高妻 洋成 独立行政法人文化財研究所奈良文化財研究所, 埋蔵文化財センター, 主任研究官 (80234699)
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研究分担者 |
手代木 美穂 東北大学, 大学院・工学研究科, 助手 (80323070)
猪俣 宏 東北大学, 大学院・工学研究科, 教授 (10168479)
肥塚 隆保 独立行政法人文化財研究所奈良文化財研究所, 埋蔵文化財センター, 保存修復科学研究室長 (10099955)
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研究期間 (年度) |
1999 – 2001
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キーワード | 出土木材 / 超臨界点乾燥 / 保存処理 / 二酸化炭素 / エチルアルコール / ポリエチレングリコール / マンニトール / 寸法安定性 |
研究概要 |
物質中に含まれる液相を超臨界状態にするかあるいは超臨界流体に置換し、液相から気相への相変化を起こすことなく超臨界流体を除去することにより、物質を収縮させることなく乾燥することが可能である。この乾燥法が超臨界点乾燥法と呼ばれるものであり、本研究では、超臨界二酸化炭素を用いた水浸出土木材の新規の保存処理法を開発してきた。本処理においては、超臨界二酸化炭素が水を抽出して木材を乾燥することが容易ではないため、両者に親和性を持つエタノールを用いる必要がある。したがって、開発の方針としては木材中の水を全てエタノールに置換する前処理をともなう方法とエタノールと強化含浸薬剤を木材と同時にチャンバー内に仕込み、含浸から乾燥までを連続して行う方法とを検討した。 その結果、前処理として内包する水をエタノールに全置換した試料に対して超臨界液体クロマトグラフィを用いる方法により検討を行ったところ、乾燥工程中の昇温操作が試料の収縮に大きく関与することが推察された。含浸から乾燥までを連続工程で行う保存処理実験ではポリエチレングリコールの木材中への迅速かつ十分な含浸を達成することができた。これは、超臨界流体の持っ「液体としての溶質溶解性」と「気体としての拡散性」の両面を活かして水浸出土木材中へ迅速な薬剤含浸をおこない、さらには超臨界状態からの相変化をともなわない乾燥をおこなうことにより、良好な保存処理結果を得ることができることを示唆するものである。 本研究において、出土有機質遺物の保存処理において超臨界点乾燥という新たな手法を提示できたことはきわめて意義深いものである。今後は、出土有機質遺物の種類や劣化状態に応じた最適な処理条件についてさらに開発を進める予定である。
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