研究概要 |
今年度は,1)沖縄島の台地上での「実験貝塚」の設置,2)内湾のマガキ採集に伴う微小貝類の貝塚への持ち込み,の2つについて検討を開始した. 1)実験貝塚は,約1.5リットルで目合い2mmのザルに,食用後の貝塚等を入れて作成した.設置場所は,南部の石灰岩台地上の那覇市首里末吉公園の二次林内である.実験貝塚に用いたセットは,(1)食用後の2枚貝のアサリ殻,(2)食用後の巻貝のマガキガイ殻,(3)遺跡出土のシャコガイ殻,(4)底部にシャコガイ殻をひいた砂丘砂の4つである.さらに,(1),(2)には,魚類のサンマとグルクンを貝殻上に入れた. これらのセット間の対比等により,多くの情報が得られるものと考えられる.つまり(1)実際に,どのような陸産貝類が貝塚内に溜まるか,特に陸産貝類の生死を判別することによって,陸産貝類が自ら貝塚を選択したのか,死殻が堆積したのかを検証できる,(2)食用後の貝殻と遺跡出土の貝殻のセットを比較することにより,漠然と想定されてきた「貝塚の腐敗物に陸産貝類が集中する」という考えの可否を検証できる,(3)魚類の2種の骨が貝塚内でどのように動くか,(4)魚類の2種では,サンマの骨は比較的薄質で,グルクンのものは厚質であり,この両者の質による相違が貝塚内の骨の残存率に影響を与えるか,等である.次年度以降,この実験貝塚を発掘する予定である. 2)マガキ採集に伴う微小貝類の持ち込みに関しては,熊本県のやや内湾の島原湾と内湾の八代海の群集組成の異なった2地点で,実際に食用のために採集され,投棄されたマガキ殻を採取した.このマガキ殻には,ウネナシトマヤガイ,ナミマガシワ等の貝類が付着しており,マガキを主体とする貝塚から出土する微小貝類の組成と量を検証する好材料である.今後,詳細に検討する予定である.
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