研究概要 |
本研究では,教授活動や評価活動を支援するために,潜在的な子どもの見方や考え方,とりわけ,子ども独自の科学的認識の変容を反映しているものをポートフォリオとして保存し,これらを積極的に活用し,そのシステム的な運用を実践的に試みた。 本年度も,昨年度に引き続き,ポートフォリオの中に,子どもの学習の様子,思考の過程,作成した作品,反省的思考やメタ認知の様子などの保存を試みた。小学校・中学校・高等学校における実践の中では,児童や生徒自らが作成したポートフォリオをもとにこれまでの学習を振り返りながら新たな学習にのぞむようになった。さらに,教師がポートフォリオの使用を工夫することにより児童・生徒が積極的にポートフォリオを活用するようになり,必要に応じて自己評価や他者評価を行えるようになったことが明らかになった。また,今回の研究実践に携わった教師達は,ポートフォリオを活用することによって,より詳細に子ども達の実態を把握できるようになった。 さらに,ポートフォリオアセスメントの評価指標であるルーブリックの使用に関しては,結果指向の評価活動からプロセス指向の評価活動へ移行する契機になることが確認できた。特に,インターネット上での学校と大学研究室のコラボレーションでは,具体的な課題と,そこで観察された学習者の反応を十分に検討しながらルーブリックを構築することの重要さを指摘した。 本研究により,子ども独自の科学的認識を授業の中で積極的に評価し,活用することが可能となった。しかし,教師がこのような子どもの認識の変容を,授業の中で本格的に生かした活動を行うことにはまだ多くの困難が伴っている。
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