研究概要 |
本研究の目的は,中学生の理科学習意欲を効果的に育成するための学習指導法の在り方を探ることであった。この目的を達成するために,2つの調査を行った。一つは,理科学習の好き・嫌いと内発的動機づけとの関連を調査したものである(以下,好き・嫌い調査)。もう一つは,中学校理科教師の授業観によって,生徒の学習意欲がどのような影響を受けるかを調査したものである(以下,授業観調査)。 好き・嫌い調査は,千葉県内の3つの小学校に在籍する6年生,176名(男92名,女84名)を対象として実施した。6年生を対象としたのは,中学校入学以前における理科の好き・嫌いの実態を明らかにしたかったからである。その結果,児童はA区分よりもB・C区分の学習を好む傾向があること,挑戦,好奇心といった内発的動機づけは男子のほうが女子よりも高いこと,理科を楽しいと感じる子どもほど理科が好きと答える傾向があること,などが明らかにされた。 授業観調査は,県内の中学校理科教員243名を対象として,郵送による調査を行った。その結果,4つの授業観を特定した。伝達的な授業も支援的な授業も重視しない教師は,努力すれば生徒の成績はよくなると考えていないことが明らかにされた。さらに,授業観の異なる教師の授業を受けている生徒の学習意欲を測定したところ,伝達的な授業を重視する教師の授業を受けている生徒は,テストで高い点数を得ることに学習意欲を示すことが明らかにされた。教師の授業観によって,どのような場面に対して学生徒が習意欲を喚起するかは異なるのである。 以上から,学習意欲の育成には生徒の内発的な動機づけを与える学習内容の構成とどのような授業を行おうとするかに関する教師の授業観を再考することが重要であると言える。
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